たこ焼き一休庵

No.07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

サンタモニカの風が吹く?

広島ジモティーズは今宵も

MAYOTACOパーティ!

ダイエッターにとっては禁断のうまみドラッグ、マヨネーズ。それをたっぷり含んだマヨタコを、どこにもないカタチで食べさせる店が広島の郊外にあるという。タコ焼きという愛すべきジャンクフードを独自にカスタマイズ&チューンナップしてできたその一品はいかなるものか? 広島ウエストコーストへ車を走らせた調査隊を待っていたのは……あれ? 想像してる感じの店、どこにも見つからないんですけど?

 

(取材/絶メシ調査隊 ライター名/清水浩司)

タコ焼きとマヨの相思相愛
だがこれは文字通り溺愛だッ!

ライター清水

「さて、今日からはじまりました『世界なるほどジェスチャー★ジェスチャー』。今日の案内人は絶メシ調査隊広島支部の清水浩司です。さっそく今日探訪する店をジェスチャーで表現してみます。さあ、どうだ!……え、顔が気持ち悪い? それは言わないで。ちょっと若い人にはわかりづらいかな? ヒントは“とんち”……第2ヒントは“ポクポクポク、チーン!”……そう、正解は“一休さん”。そこから転じて今日のお店は『一休庵』。なんだか渋いソバ屋さんみたいな名前ですね」

と、いまどきありえないクイズ番組の設定でライター清水が向かったのは広島市佐伯区五日市にある「一休庵」。老舗のお好み焼き屋で、“タコ焼きfeat.マヨネーズ”でおなじみのマヨタコ発祥の店と言われている。さて、名前からしてどんな和風な店構えなのか探しまくるが――。

 

ないなぁ……

ないなぁ……

 

困ったなぁ……

 

ここで聞いてみようか。

 

ライター清水

「あのー、すいません。このあたりに一休庵ってお店ありませんか?」

稲垣さん

「Welcome to IKKYU-AN。ここが一休庵だよ」

ライター清水

「大変失礼しました! こんなアメリカンダイナーみたいなお店が一休庵とは。チョット頭が付いていかないので、ひとまずマヨタコを食べさせてもらっていいですか?」

稲垣さん

「よっしゃ。じゃあスタッフに作ってもらおうか」

ライター清水

「うわ、タコ大きいですね」

稲垣さん

「タコ焼きじゃけぇタコは大きくないとね。1個8グラムくらいありますよ」

そして次は……えええッ!!

ライター清水

「マヨ、こんなに入れるんですか!? しかもこのタイミングで!」

稲垣さん

「世の中にマヨタコは他にもあるけど、こういう作り方をしてる店はウチだけじゃないかな?」

あまりの衝撃映像なので、もう一度見ていいですか?

地獄の連続マヨ投下マシーン!

ライター清水

「これ、震えがくるほど怖ろしい絵面ですね。そして5分程度でマヨタコ完成。早い!」

稲垣さん

「ウチはすごい強火で作っとるんよ。中がマヨネーズじゃけえ、弱火でやるとマヨが溶けて流れ出てしまってね。マヨは油だから早くくるむのが大事なんです」

一休庵の「元祖マヨタコ(8P)」500円也

ライター清水

「さっそくアツアツなうちにいただきます。いざ、実食!」

実食、ちょっと待ったァ~

少し冷ましたマヨタコと
広島ならではの牡蠣丸

稲垣さん

「すぐは食べん方がいいですよ。僕らは3~4分放置して食べるんが好きでね。マヨは油だから火が伝わりやすく、普通のタコ焼きより熱くなっとるんです。いま食べたら溶けたマヨがドロッと出てヤケドしますよ」

ライター清水

「あぶねえ……口内ヤケドするところでした」

稲垣さん

「ただ、マヨタコは一口でパクッと食ってほしいんよね。バラして食べたらおいしさが半減する。一個丸ごとパクッといくと、溶けたマヨネーズと具材のおいしさが口の中で混ざり合って最高なんですよ」

ライター清水

「一口でパクッとですね。そろそろいい具合に冷めたかな?」

 

パクッ。こ、これは……!

ライター清水

「まず口の中にあふれてくるマヨのコク。噛むとその後にタコ、紅ショウガ、キャベツ、魚粉……すべての味が混然一体となって押し寄せてくる。いやー、これはウマイ! タコも食べ応えある大きさだし。確かに少し冷めた方がマヨ爆弾をじっくり味わえますね」

稲垣さん

「そうでしょ? マヨを上にかけても、そのおいしさは出ないんです。中に入っとるのがええんです。だってアンパンもクリームパンも中に入ってるじゃないですか。パンの上にアンコ乗せて食べても違うでしょ?」

ライター清水

「その理論はちょっとわかりませんが、マヨカケやマヨツケとは明らかに違いますね。少し冷えたことでマヨがプルンとしてるのも楽しいし、これはヤミツキになりますよ。頭が健康を気にしてやめとけと叫んでも、カラダは悪魔の味覚に抗えません。うまーい!」

稲垣さん

「もうひとつウチの自慢の牡蠣入りメニューがあるんだけど、それも食べてみるか?」

ライター清水

「モチロンです。連チャンでお願いします!」

急遽第2部「牡蠣丸」編突入

ほい、「牡蠣丸(6P)」600円也

ライター清水

「文字量の都合上、超高速でお送りしましたが、コチラも牡蠣がデカい! お尻か頭がコンニチワしてます」

稲垣さん

「やっぱり広島らしいメニューがひとつはほしいと思ってね。牡蠣は近場のもの。将来的には三次の白ワインで蒸して、瀬戸田のレモンを絞ったオール広島食材で作りたいんよ」

ライター清水

「ではいただきます。ああ、とにかく牡蠣が大きくて食べ応え抜群。牡蠣の磯の香りが口いっぱいに広がります。そして意外とポン酢とマヨの相性がバッチリ。ここにもマヨってムチャすんなぁって思ったけど、これアリですよ。大アリ!」

稲垣さん

「そうじゃろ? ちょっとタルタルソースみたいな感覚で食えるよね」

腹も十分膨れたことだし、そろそろどうしてタコ焼き屋がこんなアメリカンなことになったのか、絶メシの裏側について聞かせてください!

車と音楽と素敵な仲間
男のロマン満喫の40年

ライター清水

「お店は今年創業40周年らしいですね。1981(昭和56)年オープン」

稲垣さん

「そうなんです。最初はおふくろと2人で40年前にはじめたんです。僕はそれまで営業の仕事をしとったけど煮詰まって。おふくろが10年くらいお好み焼き屋の手伝いをしとったんで、誘って一緒にやることにしたんです。当時はおふくろがお好み担当で、僕がタコ焼きを担当。最低の資金でスタートしました」

ライター清水

「マヨタコは当初からあったんですか?」

 

稲垣さん

「もともと僕がマヨネーズ好きで、冗談でタコ焼きに絞って焼きよったんです。そしたら友達界隈でそれがおいしいって評判になって。オープンして1年くらいでメニューに加えましたね」

ライター清水

「当時は店の雰囲気はこんな感じじゃなかったわけですよね?」

稲垣さん

「そうですよ。最初は小さい普通のお好み屋ですよ」

稲垣さんに開店時の写真を見せてもらった。

これが一体なぜ?

ただ、「IKUY-AN」って間違ってるよ!!

ライター清水

「このアメリカン・フィフティーズ感は稲垣さんの趣味ですか?」

稲垣さん

「わしは50年代に生まれたんだけど、その時代のアメリカの車や家具、そのデザインや色使いのすべてが好きで。開店当時もちょこちょこした小物を置いとったんよ。それが人間儲かるようになると、いろいろやりとうなるもんでね(笑)。だんだん店が日本風から離れていったんです」

ライター清水

「屋号は一休庵なのに店はアメリカンって、カオスすぎますよ!」

そもそも一休庵という名前は、稲垣さんが小学1年生から“一休”というアダ名で呼ばれていたことに由来する。店が軌道に乗ると稲垣さんのアメリカ趣味がムクムクと頭をもたげ、アメリカナイズド一直線。さらに50’sな店内でタコ焼きを食す珍百景がテレビで紹介されると、一休庵は一気にブレイクする。
稲垣さん

「当時はテレビを見て、遠くから来てくださる方もいて。そういう人は一休庵って漢字で書いてあると思って、『店が見つからない』って電話してくるんです。で、『信号の角にアメリカ風の変わった店がないですか?』って言ったら、『え、これ!?』って

ライター清水

「それ、新喜劇の池乃めだかのネタですよ。稲垣さんのアメリカ愛はずっと変わらず?」

稲垣さん

「バブルの時代に繁盛すると、毎年アメリカに行ってアメリカの商品を仕入れるようになって。一時は『アメリカに出店したいのぉ』って思よったけど、わしはヤリ手じゃないもんで、それはできんかったですね……(遠い目)」

と言うものの、稲垣さんのアメリカンドリームは止まらない。15年前には店を増築してハワイアンバー「Tiki Tripを併設。昨年はさらに横の物件を手に入れ、アメリカ雑貨とアメ車パーツの店「CHAP MANをオープンさせた。夢に生きて、夢を追い続ける姿は男のロマンそのものだ。

ライター清水

「今回は絶メシ取材なんですけど、このアメリカ帝国の後継者はいるんですか?」

稲垣さん

「いま30代の甥っ子がCHAP MANを手伝ってくれてて、後釜になってもいいかなって話はしよるんです。それがどうなるか……」

ライター清水

「候補はおられるんですね。それはよかったです。でも改めて見ると、マヨタコといい店の内外装といいハワイアンバーといい、稲垣さんのキャラ全開ですよね。誰にもマネできないですよ」

稲垣さん

「気が付けばどんどん色が濃くなってしまいましたね。それがええんか悪いんかわからんですけど……。まあ、『一度の人生、楽しくやろうや』が僕のテーマですから!」

店はたくさんの地元仲間、車仲間、音楽仲間が集まり、いつも大賑わい。年に何度かは生バンドを入れてミニライブやイベントを行ったりもするのだとか。そんなときはマヨタコをツマミに飲み放題――って、こんなゴキゲンなロコ・ダイナーが近くにあったら、ずばりサイコーじゃないですか。

 

実は稲垣さん、アメ車と音楽への愛情から某有名ミュージシャンと縁があり、広島ライブの打ち上げはよく「一休庵」で行われている。最後はその方に敬意を表して、ビシッとポーズを決めてもらった。準備はイイですか? いきますよ? 合言葉はもちろん――

 

一休庵、イイーーーーネッ!

取材・文/清水浩司

撮影/キクイヒロシ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加