カフェテリアクラブマン

No.03

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世話好きお父さんノンストップ!
オリジナルコロッケで心も胃袋もホクホクに

洋食の中でコロッケといえば、ひときわ家庭的なメニューとして愛される料理。そのコロッケで人気のお店が広島市西区田方にある「クラブマン」だ。写真を見ただけでもハンパなく家庭的なにおいが伝わってくるが、現場を訪れた調査隊を待っていたのは料理に輪をかけて家庭的なオーナー夫婦。はたしてキミは怒涛の“世話焼き攻撃”に耐えられるか? 開店30周年を迎えたカフェテリアを舞台にしたファミリー劇場のはじまりはじまり~。

(取材/絶メシ調査隊  ライター名/清水浩司)

「先に外観撮る? 後でいい?」
世話焼きすぎるお父さん登場!

ライター清水

「こんにちは。またしても登場の絶メシ調査隊広島支部隊員番号001の清水浩司です。わたくし高校卒業まで広島ですごした後、東京で暮らし、40で故郷に戻ってまいりました。十代の頃は『こんなイナカにゃナンもねーぜ!』と若気の至りカマしてましたが、改めて地元を眺めるとイイ人、イイ店、イイ光景がいっぱいあるんです。若き日の贖罪として今日も広島のイイトコロを紹介します!」

ということで、ライター清水が向かったのは西区田方にあるカフェテリア「クラブマン」。西広島バイパス田方橋からTHE OUTLETS HIROSHIMAでにぎわう石内方面に抜ける道の途中に建っている。事前情報ではマスターが一級建築士の免許を持っていて、店舗も自分で設計したというが……なかなか居心地のよさそうな雰囲気じゃないですか。

むむむっ!

店の玄関には、いきなり客を試すような品書きが。「クラブマンのコロッケは11種類」。そう、ここクラブマンはコロッケがウリの店。しかもその数11種。「きんぴら」とか「たらこイカ」とか変わってるなぁ……あと「激辛」の推し方がはんぱない……それにしてもこのカラフルなマーカーの使い方は一体……。

なんだかよくわからないメニューもあるが、食べたいコロッケと覚悟は決まった。それでは、イザ!

たのも~。

ライター清水

「はじめまして、絶メシ調査隊広島支部会員番号002の清水と申します。本日は取材にやってまいりました」

則彦さん

「おう、いらっしゃい。外、暑かったじゃろ? なんか飲むか? アイスコーヒー飲むか? 飲むんか?」

ライター清水

「あ、いただきます。今日はお店の看板メニューの『おまかせ5つのコロッケ盛合せ』を中心に取材できればと思ってまして――」

則彦さん

「その盛合せじゃけど、ウチはコロッケの種類によってソースの色が違うんよ。白と赤と黒の3種類があって、きれいに分かれた方がええと思うけど、どうする?」

ライター清水

「なるほど、絵ヅラ的にはそうですね(取材のことめっちゃ考えてくれてるな……)。人気があるのはどのコロッケですか?」

則彦さん

「初心者は肉じゃが、きんぴらも人気よね。激辛は……辛いの大丈夫?」

ライター清水

「大好物です。じゃあ、コレとコレとコレとコレとコレでどうですか?」

則彦さん

「それでええと思うよ。あと、写真撮るとき、カットして中を見せる? カットするんじゃったら断面にツブツブが見える、たらこイカがおすすめじゃけど」

ライター清水

「じゃあ、たらこイカも入れましょう(気遣い細かいな……)。そもそも小島さんがこのお店を作ったのが31年前と聞いてますが、当時からコロッケは11種類で……」

則彦さん

「(話をさえぎって)もう外観は撮ったんか? そっちはええんか? ヨシ、じゃあキッチン行こう!」

ライター清水

「(えええ……せっかちぃ~!)」

取材の面倒を丸ごと見てくれる小島さんペースに引きずられて厨房へ。料理を担当するのは奥様の清美さんです。

清美さん曰く、クラブマンのコロッケの衣はドライパン粉と食パンをフードプロセッサーで砕いたものを混ぜて使っているとか。そのおかげで薄いのにさっくりとした食感になるらしい。

そして、いよいよ実食の時間!

たくさんの「めずら美味しい」が
楽しめる5点盛でお腹は満腹

ライター清水

「うわっ、かわいい! そして楽しそう! 則彦さん、確かに彩りもバリエーションもバッチリです」

則彦さん

「これじゃあどれがどの種類かわからんか……ちょっと待っとって……(紙とペンを取に行く)……これでわかるじゃろ?」

ライター清水

「ホント何から何まですいません……では今度こそいただきます! まずは人気のきんぴらからいってみようかな」

さくっ!

ふわっ!

ほくっ!

ライター清水

「則彦さん、これめちゃくちゃウマイっすね! 衣はサクサクで中は和風の味付け。きんぴらにコロッケってどうなんだろうと思ってたけど、ポテトの中に刻んだゴボウと人参が入ってるんですね。きんぴら、コロッケに合うな~」

則彦さん

「味がしっかり付いとるけぇ、酒のツマミにもいいじゃろ?」

ライター清水

「きんぴらとコロッケ、ありそうでなかった組み合わせですね。次はどれにしようかな……じゃあ『激辛パリパリウインナーコロッケ』で……辛ッ! これは後からかなりきますね。ポテトの中に入ってるウインナー、チョリソーなんですね」

則彦さん

「じゃけえ激辛って言うたじゃないね(笑顔)。これはウインナーだけじゃなく、ポテトも辛うしとるんよ」

今回頼んだのは「きんぴらコロッケ」「激辛パリパリウインナーコロッケ」「たらこイカコロッケ」以外に、「パンプキンチーズコロッケ」「エビイカコロッケ」の5種類。どれもありそうでなかった組み合わせで、だけどやけにコロッケになじむ味わいで、食べていて飽きさせない。基本的にお客さん2人で一皿を分け合うことが多いようだが、ワイワイ言いながらいろんな味を食べ比べるのは、家族であれ、恋人であれ、友人同士であれ、幸福な一時に違いない。パンプキン以外は全部ポテトがベースなので、気が付けばお腹もいっぱいで、心も胃袋もホクホクに満たされているという塩梅だ。

ライター清水

「いやー、おかげでお腹いっぱいになりました。そろそろオープン時の話を聞かないと……そもそもどうしてこのお店をはじめたんですか?」

則彦さん

いや、奥さんがやるって言ったので。『ハイ、わかりました!!(敬礼)』と」

ライター清水

「え、お店は則彦さんがはじめたんじゃないんですか!? こんなに取材を仕切ってるのに?」

則彦さん

「そもそも最初はパスタの店を出すつもりじゃったんよ。でも当時あちこちにパスタの店ができて、人がやってないことの方がええと思ったんで、店を作ってる途中でコロッケの店に方向転換して――」

ライター清水

「あ、そのコロッケへの方針転換を小島さんがやったんですね?」

則彦さん

「いや、それも『ご命令のまま、西太后さま!(敬礼)』って――」

ライター清水

「チョットそのあたり詳しく聞かせてくださいよ!」

趣味に突っ走る旦那さん
はたして奥様の真の想いは?

改めて情報を整理しよう。もともと建築の仕事をしていた則彦さんに、奥さんの清美さんが「お店をやりたい」と提案する。さっそく店舗の設計に勤しんでいた則彦さんだが、お店の設計中に急遽メインの料理をパスタからコロッケに変更することを決断。それが当たり、1991年の創業以来31年間、クラブマンは地元に愛される店となった。則彦さんは開店後に会社を辞め、お店を手伝うようになったという。

ライター清水

「こんなに則彦さんが全面的に仕切ってるのに、実は奥様が発起人だし料理もほとんど担当というのはオドロキですよ。クラブマンって店名も則彦さんが付けたんでしょ?」

則彦さん

「クラブマンって、車やバイクが好きな人たちが作るクラブがあるじゃろ? そこに集う人たちって意味もあるし、MINIの車にクラブマンもあるし、バイクにもベロセットベノムクラブマンがあって、それにあやかってホンダもGB250クラブマンを出して……(うんぬんかんかん)」

ライター清水

「めちゃくちゃ則彦さんの趣味じゃないですか! お店をやっててよかったと思うことは何ですか?」

則彦さん

「昔のお客さんが久しぶりに来てくれたときじゃね。バイトの子もそう。ウチはバイトの子を大切にしとって、これまで130人くらいバイトの子がいて。外国に住んどる子もたくさんいて、『いつでも泊りに来てくださいね』って言うてくれるんじゃけど、『それならチケット代、出せや!』っていうてね(笑顔)。あと、店に来はじめた頃は独身だった男の子がおって、その子は毎年毎年クリスマスイブに一人で来よったんよ。そしたらあるとき女性を連れてきて、『おまえ冗談かいの!』って思いよったら、その子と結婚して今では高校生の子供を連れてくるようになっとるけぇね。そういう人らが、いっぱいおるんよ」

ライター清水

「あぁ、その感じわかります……則彦さんの世話好きな感じとこの店の実家っぽい空気。コロッケっていうのも家庭料理ですもんね。お店の継承とか考えたりします?」

則彦さん

「ないないないない。こういうのはね、惜しまれてるうちにやめるのが一番よ。後継については考えてないかな。わしもリューマチで皿を持つのも大変だけど……あ、コーヒあるぞ? おかわり飲むか?」

ライター清水

「もうお腹だぼだぼです。ちなみにいま則彦さんいくつなんですか?」

則彦さん

「わし? 今? 今年で9になるよ。69。でも気分は19歳よ! ハハハハハ!」

取材を終えて帰ろうとする調査隊を、則彦さんは駐車場まで見送りに出てくれた。「本当に丁寧で、人の世話を焼くのが好きな方だな~」と感動していたら、駐車場の隅に停めてあるマニアそうな車に一直線に近づいていく則彦さん。

え、もしかして愛車を自慢したいだけ?

ていうか、これも撮れ、と?

取材、満足していただけましたか?

すっかり撮影延長戦に入っている中、そっと近づいてきた清美さんがポツリ。「ほんとスイマセン、ウチの主人、テレビとか来るといつも仕切って仕切って……もう恥ずかしくて仕方なくて。私はいつも『余計なことを~~~~』って思うんですけど……」。

いやいや、私どもは“ソレ込み”でクラブマンを絶メシリストに掲載したいと思います。ほっこりしたコロッケの味わい、家庭的な店の雰囲気、そして取材が来ると仕切りたくてたまらないご主人と奥さんのホノボノコンビネーション……これからもこのままでいてくださいね!

取材・文/清水浩司

撮影/キクイヒロシ

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